摩天楼(松本隆)・ワイングラス(南)・マシンガン(矢野誠)!...カンカン帽を浮かしニヒルな笑みを投げるJKT写(撮ったのは井出精児!)が、聴く前から濃霧の如く妖しいオーラを発しまくり。中身はさらに、さらに妖しく、早熟の天才たちが繰り広げる音のモダン活劇!
■はっぴいえんど。南佳孝。原田真二。
昭和47('72)年にテレビ番組「リブ・ヤング」(フジテレビ系)のシンガーソングライターコンテストで3位入賞後、はっぴいえんどの解散コンサートでデビューした南の、既にスモーキィな風合いを見せながらも、1stならではの「蒼さ」が乗ったヴォーカル(当時まだ23歳)が、第一に本盤の魅力!これ、本当にトロけます!そして帯の「シティミュージックのプリンス」*1というコンセプトの標榜者 ―JKTデザイン含めてオール・プロデュースを行った― 松本隆の、モダニズム全開の歌詞(当時24歳。しかも制作としてはこれがデビュー作)。後に原田真二で当たる「プリンス」路線の原型を聴くことができます(コレのさらなる原型は当然、はっぴいえんど)。
■"満載"なのであります。
聴き所は...「このレコードはポップ・ミュージックのスイセン盤だよ」と言わんばかりの美味しすぎる幕開け[A1]、上記コンテストの披露曲でもあった攻めのフォーキー・グルーヴ[A4]、ハモンドの裏刻みがコロコロと実に分かってらっしゃる[A5]*2、弦の長尺イントロでまた異空間へ飛ばされる[B1]、南佳孝本人によるピアノ弾き語りに弦クアルテットがかぶさる英国的センスの[B4](これ、まるでコリン・ブランストーン『1年間』の世界)。ラストで色気全開、ダンディズム名唱[B5]等等、"満載"なのであります。
■とにかく終始ブレない!
軟派を硬派に突き進む2人(松本:作詞+演出 vs. 南:作曲+演技)が組んだ骨と臓器に、"プレ"キャラメル・ママの面々(細野晴臣・鈴木茂・駒沢裕城+矢野誠)が多彩な演奏で肉付けして完成した、王子の虚像。しかも「ヒーロー・サイド([A]面)」「ヒロイン・サイド([B]面)」と表裏で分けて銘打たれ、「ヒーロー..」は王子目線、「ヒロイン..」は王子の放つ魅力から逃れられない少女目線を交えて歌われるコンセプトは、アナログで聴いてこそ確実に伝わるというもの。手、込んでます!
■'70年代前半の矢野誠は異常。
随所で聴ける英国的ポップ・センスの仕掛け人は、前年に盟友・日野原幼紀の『螺旋時間』で既にニッチ風味のプレ・シティ・ポップ路線を模索していた矢野誠。'70年代前半に残された、ちょい攻撃的且つハイ・センスな仕上げの矢野仕事にLOVE SHOPはいつも泣いております!
参加ミュージシャンは下記のとおり;
プロデューサー+ディレクター:松本隆 リズム・セクション・アレンジ:松本隆/矢野誠 ストリングス&ホーン・アレンジ:矢野誠 レコーディング&ミキシング・エンジニア:AMAMIYA TAKUMA ※セカンド・プレス。おそらく'70年代半ば~末のリリース ※歌詞カード付属 ■南佳孝オフィシャル・サイトにて、ご本人による肉声で(!)アルバムの解説がチェックできます